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国際刑事裁判所(ICC)についてわかりやすく解説するページ
International Criminal Court
(ICC)

*Only in Japanese (for now)

このページは、世界中の中核犯罪を訴追し裁判する任務を負う国際機構である国際刑事裁判所(ICC)について解説します。

訪問してくださった方のICCへの理解が深まり、そして日本のICCへの関わり方について考えるきっかけとなると幸いです。

​(2022年7月29日更新)

概要

​国際刑事裁判所(International Criminal Court:ICC)は、国際社会の関心事である重大犯罪に最も責任のある者に対する刑事訴追・裁判・処罰を行う国際機関です。

「裁判所」という名称ですが、法廷や裁判官以外にも、刑事手続に欠かせない、検察局・公設弁護士事務所・被害者支援のための事務所・書記局などの機関を内在しています。

設立条約を批准する締約国による締約国会合が監督しています。

設立条約

国際刑事裁判所に関するローマ規程

The Rome Statute of the International Criminal Court

​→規程を読む

所在地

ハーグ(オランダ)

​住所:

Oude Waalsdorperweg 10 in The Hague, The Netherlands

締約国数

123(2022年5月18日現在)

(うち国連安保理常任理事国:英国、フランス) 

+ 

 

管轄権受諾国:2

(パレスチナ、ウクライナ)

 

職員数

約900名 

・裁判官18名

日本人裁判官:赤根智子氏

ICCでの裁判官としての働き方、日本人裁判官としての強み、アジアの刑事司法における日本のあり方についてインタビュー記事

・検察官380名

検察庁長官:カリム・カーン氏

日本

2007年加盟

国内法整備:

・国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律

​→条文を読む

予算

2022年度:

€154,855,000(約210億円)

建物
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(オランダはすぐ曇ったり雨が降ったりするのでなかなか晴れてるときに写真とれません。)

・真ん中がメインビルディングです。法廷と、傍聴者のためのエントランス、贈呈されたアートワーク(日本は「平和と正義の鐘」なるものを贈りました)が飾られてます。インスタ映えする羽のオブジェはメキシコから。

・両サイドの建物はそれぞれ、検察局、書記局、被告人公設代理人局、被害者公設代理人局。

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・エントランスではセキュリティチェックがありますが、裁判傍聴は誰でも予約なしにできます(要パスポート)。

・法廷に入る前にイヤホンが渡され、チャンネルを変えると、生音声、英語、フランス語が選べます。

・なぜ窓があのような仕様かというと、爆弾テロを受けたときにガラスの破片が飛び散らないようにだそうです。9.11の教訓だとか。もちろん強化ガラスです。

​・「透明性」を意識したデザイン(デンマークのデザイン会社による)です。外からでも中のスタッフが休憩していたりする様子が見えてます(たまにパソコン画面が見えそう。。。)

管轄する犯罪

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Q.なぜこの4つだけなのか?

​A.一番単純な答えとしては、ナチスがやったことにラベルを付けていったらこうなった、ということです。第二次大戦後ナチス高官らを裁いたニュルンベルク裁判(国際軍事法廷)を作るとき、連合国は法学者らにどのような犯罪類型が必要が尋ねました。英国の法学者ハーシュ・ローターパクトは、伝統的な「戦争犯罪」と「侵略=平和に対する罪」に加え、戦時下での市民の迫害を意味する「人道に対する罪」を提案しました。同じとき、元ポーランドの検察官でユダヤ人であり米国に亡命したラファエル・レムキンは、「ユダヤ人」という集団を狙いそれを絶滅させようとした点をくみ取るため、新たに「ジェノサイド(genocide)」という言葉を発案し提案しましたが、裁判所の管轄犯罪には入りませんでした。

 その後国連を中心に、「ニュルンベルク原則」と、将来の常設の国際刑事裁判所の設立を目指した「人類と平和に対する罪」の法典草案の作成が行われていきますが、その時に、「人道に対する罪」「戦争犯罪」「平和に対する罪(侵略犯罪)」に「ジェノサイド」を加えたことで、4つになりました。ただ、それぞれの罪に含まれる行為については、長年の国連での議論に加え、ICC規程起草会議でも紛糾がありました。

​権限・能力

ICCは国際機構であるが故に、締約国から移譲された権限以上のことをすることは許されていません。そのため、捜査を開始するための細かな条件が課されています。また、実際の捜査を担うのは諸国の捜査機関であり、被疑者身柄確保や証拠保全も国の機関が行うことが想定されています。締約国は、ICC規程を批准することにより、ICCからの捜査協力要請に従う義務を負います。違反の場合は、締約国会議で問題視されたり、国連安保理に通報されたりします。今のところ物理的な制裁が科された例はありません。

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締約国による非協力の代表例は、スーダンの元大統領アル・バシールに関する取扱いです。現役時代、アル・バシールにはジェノサイドや戦争犯罪の疑いでICCから逮捕状がだされました。しかしアル・バシールは外交活動をやめようとせず、南アフリカ、マラウィ、ヨルダンといったICC締約国で開催される会議に堂々と(十分なセキュリティを連れて)出席しました。これら諸国は、国際法上の「免除」を理由に正当化を図りました。「免除」の制度は、主権平等(国同士は対等な存在である)という国際法の基本原則のために国は互いを裁判しないというもので、国を裁判しないだけでなく、その国を代表する人や国家の主権的行為を行っている人に対して主権行使(逮捕したり裁判したり)しない、というものです。ICC規程には、「公的資格の無関係」を定める27条がありますが、同時に、98条2項で「外交上の免除に関する国際法に基づく義務に違反する行動を求めることとなり得る引渡し又は援助についての請求を行うことができない」としています。ただし、国際裁判所への引渡しのための逮捕は国際法上の「免除」違反とならないこと、およびスーダンの事態は国連安保理により付託されたものであって、この付託決議が国連加盟国に捜査協力を要請していること等を理由に、締約国によるアル・バシールの不逮捕・不引渡は規程違反と判断しています。

補完性原則

ICCのもう一つの特徴として、国家に対する「補完性(complementarity)」があります。これは、国家の刑罰権行使が優先され、ICCは国家の刑事司法が機能していないときに、補完的にその管轄権を行使する、という理念です(補完性原則)。

​ これを体現するのは、「事件の受理許容性審査」です。個別の事件が、ICCが扱うにあたいするものであり、国がこれについて訴追するつもりがあるか、そしてできるのか(十分な資源・制度があるのか)を審査します。

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ICCの解説サイト、e-Learning等
 

広報サイト

・国際連合広報センター「国際刑事裁判所

・外務省「国際刑事裁判所」 

e-Learning

・尾崎久仁子氏(元ICC裁判官)による講義 

・野口元朗氏(元ICC被害者信託基金理事長)による講義 

個別の解説記事

・能勢美紀「紛争解決と処罰のための国際刑事裁判所の取り組み――ウクライナとミャンマーの事例から」(JETRO、IDEスクエア)

・ 中内康夫「国際刑事裁判所(ICC)とは何か ~国際刑事裁判所ローマ規程の国会審議に当たって~ 」(立法と調査、No. 265 (2007年)

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